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天狐あやかし秘譚
第30章 愛別離苦(あいべつりく)
理性を失った目を天に向け、腹の底から響くような雄叫びを上げた。その声に呼応し、槍の先が光を放つ。

「何!?」

槍から天に一条の光が差し、その光を中心に黒雲が渦を巻き始める。つい数秒前まで星空が見えていたにも関わらずあっという間に湧き出した雲に覆われる。雲はうねり、逆巻き、稲光を纏い、雷鳴を轟かせる。

あれって・・・まさか・・・。

「ちっ!」

ダリが慌てた様子で私達のもとに来る。槍を振り上げ、呪言を奏上する。

「大雷(おおいかずち)、火雷(ほのいかずち)、
 黒雷(くろいかずち)、柝雷(さくいかづち)、
 若雷(わかいかずち)、土雷(つちいかずち)、
 鳴雷(なるいかずち)、伏雷(ふしいかずち)、
 黄泉の八雷神(はちらいしん)、奇魂(くしみたま)、荒御魂(あらみたま)、そこここに、勢(せい)分かち給へ」

ダリが掲げた槍の先から八条の雷光が水平に展開する。その光は私や草介さんはもとより、私達が先程まで戦っていた場所すら覆うほどの雷の膜を形成する。

ダリが雷によって結界を張ったのだと分かった。
それが展開し終わるのと、ホシガリ様が呼び出した暗雲から雷が一斉に降り注ぐのがほぼ同時だった。

万雷が轟音をあげて周囲にまるで無尽蔵かのごとく降り注いだ。

「きゃああ!!!」
私と草介さんはたまらず頭を抱えてしゃがみ込む。ダリの結界があるとは言え、音までは遮られない。鼓膜が破れそうなほどの轟音にさらされ私は悲鳴を上げ続けた。

「ぐああああああ!!!!」

ホシガリ様がまたひとつ吠えた。
雷のシャワーはたっぷり5分程続くことになる。

そして、不意に周囲の音が止む。
終わった?

ホシガリ様が、先ほどダリが屋敷を壊したのと同じ術式を発動したということは後で知ったことだった。ただ、ダリは妖力を調整し、人に危害が加わらないようにしていたらしいが、ホシガリ様のそれは最大出力で放たれたらしい。ダリが結界で阻止しなければ、私達はもちろん、倒れていた圭介や圭介の仲間の男たちも皆死んでいただろうとのことだった。

でも、こっちにはダリがいるし!
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