この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第35章 真実一路(しんじついちろ)
「ママ・・・大好きだよ。だから・・・お願い・・・笑っていて」

すっと環が手を緩めた。そのまま一歩後ずさる。

「行かないで・・・行かないで、環・・・」

環はふるふると首を振った。

「もう、行かなきゃいけない・・・。ありがとう・・・ママ」

笑顔の環がゆっくりと透けていく
ありがとうって・・・なんで、そんな・・・私、こんなダメな母親なのに・・・。

「ママ・・・バイバイ・・・」

環が消えてしまう・・・。最後に・・・最後に・・・。
笑ってほしい・・・そう言うなら。

私は、ぐいと流れる涙を袖で拭い、強引に口角を上げた。

だったら、せめて、無理矢理にでも・・・笑った顔を・・・望み通りに・・・。

「環・・・バイバイ・・・お空で待ってて・・・ママ、ちゃんと迎えに行くから」

『うん・・・環、お空にいるから。ちゃんといい子で待ってる。だから、ママ・・・お空に来たとき、環にたくさん楽しいお話をしてね。』
『私・・・ママの子に生まれて良かったよ。良かった。本当に・・・ありがとう・・・。』
『最後に・・・ママ、笑ってくれて・・・嬉しかった。バイバイ・・・またね・・・』

そう言い残して、環の姿は、闇に溶けて・・・消えてしまった。
最後の言葉は、まるで自分の胸の中に直接響いてきたような気がした。

環が消えた闇の向こう、窓の外には、いつしかチラチラと雪が舞っている。

環が完全に消えてしまった。そう思うと、こらえていた涙がまた、ぼろりと落ちてきてしまう。

ぼろぼろ、ぼろぼろ。
止めることが出来なかった。

やっぱり無理だよ・・・環。
環がいないのに、笑ってなんていられないよ・・・。

でも、笑ってないと、環が心配するなら・・・頑張らなきゃいけない。
頑張るよ・・・でもさ、お願い・・・今だけ・・・今だけ・・・許して。

ちゃんと泣いたら・・・いっぱい泣いたら、ちゃんと、笑えるように、お空で、いっぱい環に楽しいお話ができるように・・・するからさ・・・。

環が消えた病室。
窓の外にはしんしんと雪が降り続いていた。

私は、環のプレゼントを胸に抱きしめて、今だけと、ただただ、涙を流し続けていた。
/726ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ