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天狐あやかし秘譚
第49章 淫祠邪教(いんしじゃきょう)

☆☆☆
私達、陰陽寮は、疱瘡神が封印されたことをきっかけに中類村への救助救援活動を開始した。村人352名は全員、救急病院に搬送され、急遽かき集めたアオギリソウ製剤による治療が開始されている。今日現在で、悪化、死亡等の報告は入っていないので、おそらく全員が回復の途につくと思われる。
また、土御門様の術、『黒帝水晶結』によって水晶柱に封印された疱瘡神については、付近一帯の山ごと陰陽寮が接収し、国有地として管理することで話がついていた。今後は、陰陽寮京都支所の陰陽師らが、山全体を何重にも渡る結界で覆うとともに疱瘡神の状態監視の任に当たることになっている。
ここまでは、問題のない事後処置だ。問題は、ここからだった。
まず、品々物之比礼他、神宝の行方である。
おそらく颯馬によって中類村に持ち込まれた『品々物之比礼』だけではなく、颯馬が持っていた『足玉』、そしてシラクモと名乗った男が使った『蜂肩巾』が、突如戦闘中に現れた『緋紅』と名乗る謎の男によってまんまと持ち去られた。それだけではない。緋紅自身も神宝『八握剣』を使用したところが現認されている。
神宝とは、正確に言えば『十種の神宝』(とくさのかんだから)のことである。
十種の神宝とは、平安の昔までは天皇家が保管していた、神の力を有する次の十種の宝具である。
すなわち
蜂肩巾(はちのひれ)
蛇肩巾(へびのひれ)
足玉(たるたま)
生玉(いくたま)
道返玉(ちがえしのたま)
死返玉(まかるがえしのたま)
沖津鏡(おきつかがみ)
辺津鏡(へつかがみ)
八握剣(やつかのつるぎ)
品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)
の十種である。
これらはいずれ劣らぬ権能を持ち、たったひとつだけであっても使いこなせば国を傾けるほどの神力を有していると言われている。緋紅はこの十の神宝の内、ひとつを有し、三つを奪い去ったわけである。そして、更に悪いことに、彼が現れた時、鬼道を渡ってきたところを見ると、鬼道を操ることができる『道返玉』もその手にある可能性が高いと考えられた。
実に、神宝の内、半分を所有していることになる。
彼が何者かは分からないが、それだけの神宝を使える形で有している事自体、国家レベルの脅威である。そして、最悪なのは、陰陽寮の最高戦力である土御門様が、それほど重要な神宝をみすみす奪われてしまった、という事実だった。
私達、陰陽寮は、疱瘡神が封印されたことをきっかけに中類村への救助救援活動を開始した。村人352名は全員、救急病院に搬送され、急遽かき集めたアオギリソウ製剤による治療が開始されている。今日現在で、悪化、死亡等の報告は入っていないので、おそらく全員が回復の途につくと思われる。
また、土御門様の術、『黒帝水晶結』によって水晶柱に封印された疱瘡神については、付近一帯の山ごと陰陽寮が接収し、国有地として管理することで話がついていた。今後は、陰陽寮京都支所の陰陽師らが、山全体を何重にも渡る結界で覆うとともに疱瘡神の状態監視の任に当たることになっている。
ここまでは、問題のない事後処置だ。問題は、ここからだった。
まず、品々物之比礼他、神宝の行方である。
おそらく颯馬によって中類村に持ち込まれた『品々物之比礼』だけではなく、颯馬が持っていた『足玉』、そしてシラクモと名乗った男が使った『蜂肩巾』が、突如戦闘中に現れた『緋紅』と名乗る謎の男によってまんまと持ち去られた。それだけではない。緋紅自身も神宝『八握剣』を使用したところが現認されている。
神宝とは、正確に言えば『十種の神宝』(とくさのかんだから)のことである。
十種の神宝とは、平安の昔までは天皇家が保管していた、神の力を有する次の十種の宝具である。
すなわち
蜂肩巾(はちのひれ)
蛇肩巾(へびのひれ)
足玉(たるたま)
生玉(いくたま)
道返玉(ちがえしのたま)
死返玉(まかるがえしのたま)
沖津鏡(おきつかがみ)
辺津鏡(へつかがみ)
八握剣(やつかのつるぎ)
品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)
の十種である。
これらはいずれ劣らぬ権能を持ち、たったひとつだけであっても使いこなせば国を傾けるほどの神力を有していると言われている。緋紅はこの十の神宝の内、ひとつを有し、三つを奪い去ったわけである。そして、更に悪いことに、彼が現れた時、鬼道を渡ってきたところを見ると、鬼道を操ることができる『道返玉』もその手にある可能性が高いと考えられた。
実に、神宝の内、半分を所有していることになる。
彼が何者かは分からないが、それだけの神宝を使える形で有している事自体、国家レベルの脅威である。そして、最悪なのは、陰陽寮の最高戦力である土御門様が、それほど重要な神宝をみすみす奪われてしまった、という事実だった。

