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白昼夢
第5章 訪問
そう言うと古川は笑うのだった。
そして続けてこういう。
「真理子さん、今日は思い切り愛し合おうね…」
私は、その言葉を聞くと緊張して答えることが出来なかった。
そんな様子を見て古川は私の肩に手を回してくる。
私の身体は少しだけビクリとしてしまう。
古川の体格はそんなに大柄ではない。
私も小柄だったが、古川もとても細くて小柄だったのだ。
その社員寮を通り過ぎて道の角に差し掛かった時、私は左に向きを変えてアパートの敷地内に入って行った。
「え?こっちなの?」
「そうよ、分かりづらいでしょう?」
私はそう言うとちょっと笑ったのだ。
古川も同じように笑っていた。
ちょっと薄暗い階段を上ってゆく。
「ここの階段、凄い急なんだね…」
「そうよ、凄い勾配なのよ、気を付けてね…」
私は、自宅の玄関の引き戸を開いて古川を中に入れた。
古川はちょっとだけ不安がっている様に感じた。
「さ、どうぞ、中に入って…」
「お邪魔しまーす…」
そう言いながら古川は私の自宅の玄関に足を踏み入れたのだ。