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白昼夢
第9章 その後
「ちょっとだけ、気分は落ち込んでるけど大丈夫よ…」
「そうか…」
「亡くなってしまった貴博さんには今まで何となく自責の念にさいなまれて来たけど何となくそれも吹っ切れた気がするの…」
貴博の事は香織にも話してあった。
すると、香織はこんなことを言ってくる。
「真理子さ、今年のクリスマスとお正月はひとりじゃないと思うよ…」
「なんで?」
香織は不思議な能力を持っていた。
相手の数か月先の未来と過去が見えるのだ。
「うん、何となくそんな気がするの…」
「そうなのね…私、貴博さんが亡くなってからずっとひとりのクリスマスだったわ…」
「今年は違うと思うよ…」
それが本当なら私はとても嬉しかったのだ。
香織が尚もこう言ってくる。
「貴博さんは、いつも真理子の傍にいるね…」
「分かるの?」
「分かるよ、今だって、真理子の後ろにいてハグしようとしてるもん…」
「そうなの?」
「そうだよ…貴博さんが守って導いてくれると思うよ…」
私はこの言葉を聞いて泪が出る思いだった。
貴博はいつも私の傍にいて守り導いてくれるのだ。
これ程、嬉しいと感じたことはなかった。