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許される条件
第3章 再会
「ようっ・・久しぶりだな?」
不意にかけられた声に僕は顔を向けた。

「た、高木・・・?」
驚きと共に苦い気持ちが湧きあがる。

僕はヤツが苦手だった。
別に嫌いというほどではない。

大学時代の同級生だ。
ゼミも僕と絵美と同じだった。

背が高く、甘いマスクは相変わらずだ。
学生時代はプレイボーイで有名で、絵美にもチョッカイ出そうとしていたのを覚えている。

「結婚式以来だな・・・?」
ジロジロと見る視線が僕ではなく、絵美に向かっていた。

本人に聞いた訳ではないが、友人からは絵美に振られたと聞いている。
まさか、まだ未練があるわけではないだろうけど。

「ねぇ・・だれ・・・?」
隣の女性が高木に聞いた。

よく見ると美人でグラマーな人だった。
プロポーションも抜群で背の高い高木と並んだ姿はモデルのようだ。

この人と比べると絵美が子供に思えてしまうほどだ。

「ああ・・大学時代の同級生さ」
僕の表情を読み取るように眺める高木が説明を始めた。

「青山と・・奥さんの絵美さん。
俺の初恋の女性さ・・・」

「ええっー・・・?」

おどけた口調に女性が歓声を上げた。

「ち、ちょっと・・・」
僕は戸惑いながら声を出した。

絵美は頬を染めて俯いている。

「冗談だよ、はははは・・・」
快活に笑う高木に隣の女性も言葉を繋ぐ。

「そうよねぇ・・・
ヤリチンのヒロシがよく言うわよぉ・・・」

「お、お前だって・・・
あっ・・忘れてた・・・
こいつ、ヤリマンのサヤカ・・・」

パシンと音がして、高木が背中を押さえて大袈裟に顔をしかめた。

【はははは・・・・】
高木と女性が声を合わせ、笑っている。

【はははは・・・・】
僕と絵美も引きつった顔で無理やり笑った。

「折角だから、お茶でもどうだい?」
高木が聞いた。

視線がずっと絵美に向けられているように感じるのは気のせいだろうか。

僕は妻の顔を見た。
少し、怯えた表情に思えた。

「す、少しだけなら・・・」
答える声に絵美が僕の腕をギュッとした。

「よし、じゃあ・・あそこの喫茶店にしよう」
高木が女性の肩を抱いて先導する。

チラリと振り向いた彼女の視線が絡みつくように感じた。
僕はその時、嫌な予感がしたのだった。
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