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雨が好き
第113章 帰りの電車
【帰りの電車】

神宮寺で桜の雨に包まれたあと、
私たちはハルニレテラスを目指した。

「新幹線の時間は17時ですからね。少しゆっくり見ても間に合うと思います」
とのことだった。

再び森の中を抜ける道。
車が横を通るので少し注意が必要だった。

前を蒼人さん、その後ろから私。
昼下がりのきらきらとした木漏れ日が、
アスファルトに陰影を刻む。

時折、吹く春の暖かい風が、
木立の匂いを運んでくる。
車がいないときは私と蒼人さんだけの道。
静かな中、自転車を漕ぐ音だけが聞こえて、
遠くでさえずる鳥の声がよく聞こえた。

森を走り抜ける。
自然の中をゆっくり、ゆっくりとサイクリング。

すこし舗装の悪い道を進むと、そこは野鳥の森
突然開けたところには大きな湖があって、
静かに水をたたえていた。
「ほら、あれ、みなとさん」
蒼人さんが指差す方向の木が、ぐらんと大きく揺れていた。
どうやらお猿さんが木の枝伝いに飛び跳ねているみたいだった。
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