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イけない王子様と魔女
第2章 2

私は話も聞かずにツカツカと窓を開け放ち、右手から魔力を放出する。

今までにないくらいの魔力が掌を焼く。

カッ!!!

辺り一面、薔薇やその他の花々がモサァッ!と生えに生え、目を丸くした庭師のおじいさんと目が合い、ごめんあそばせ、と軽く会釈すると何事も無かったように窓を閉めた。



「お、お嬢様...!?」

「魔女です」

私は魔力も性欲同様、溜まっていくものだと説明した。そんなことくらい、分かっていそうなんだけどなぁ...。ああスッキリした。

「簡潔に言いますが、報酬を下さい。頂いたら帰ります。あと庭師のおじいさんにもお詫びしたいです」

「魔女様、少々話を聞いて頂きたいのですが...」



今朝、教会の鐘が鳴ったそうだ。

それは第一王子の第一子が誕生した祝いの鐘だそうだ。

「それは喜ばしいことですね。おめでとうございます。...では失礼致します。」

「魔女様っ!お待ちを!」

宰相様が手を軽く上げると、大量のお菓子がワゴンで運ばれてくる。

素早く席に戻り「なんですの?」と答える。

「...どうぞ、召し上がりながらお聞きください。」





「魔女様に呪いを解いて頂いたのは、第二王子でございます。我が国は何代にも渡り、親族間で王位継承権を得るための争いが絶えなかったのです。」

「しかし、第二王子はあのように争いがお嫌いな優しい方。それでも第一王子派と第二王子派に分かれて水面下では」

「あの!そんな話は分かっているのです。ラノベを読む人は全員!」

「ラノ...ラノベ?」

「TLですよTL!」

「TL...でございますか?」

「そうなのです。私は魔女です。人間とは違う理の中で生きる者。自由に生き、自然を慈しみ、人々の悩みに寄り添う魔女です。」

「私が家に居ないことで、どれほどたくさんの方の苦しみが癒えていないことか...考えただけでも胸が痛みます。」



「私は帰ります!」

声に力を込めて、断固帰宅の意志を貫いた。

「あの...魔女様、お口まわりに」

ハンカチで一瞬でお菓子のかけらを拭き取った。
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