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溶け合う煙のいざないに
第1章 あみだくじ

 会話を長引かせたいような態度に、灰皿に一本目を潰して相手に向き合った。
「物好きだな」
「腹減ってるんで」
 くたびれたメニュー表を手に取り、ページを捲りながら、何度もこちらを窺う。迷っているのかとサンドイッチを勧めたが、グラタンを頼むものだから笑いが零れてしまった。
「な、なんですか」
「いや、君の雰囲気が和むんでつい」
「あー、それいじってるわ。芦馬さんこそホームズみたいな風貌で変わり者じゃあないすか。何の仕事っすか」
「しがないブロガーだよ」
「えっ。文字書ける人だ」
「初めて聞く言い方だな」
「何系の題材で書くの?」
「映画だよ。国内外両方」
 料理とコーヒーが運ばれてきて、紙に包まれたスプーンを取り出しながら卵塚が続ける。
「ってことは映画大好きなんすね。いいなあ、才能で食える人マジ尊敬」
「勤め人が合わなかっただけだ。三十頃には就職してるかもしれん」
「さん……え、おいくつですか」
「二十八だよ」
「年下あ!?」
 雑談で満ちているとはいえ、目立つ声量に店内の空気の矢印がこちらを向いた。卵塚は口に手を当ててぺこぺこと全方位に頭を下げると、抑えた声を絞り出す。
「いや、てっきり、アラフォーかなって」
「敬語にする気はないが、卵塚は?」
「三十一……っす」
「二十五過ぎたら誤差だな」
「その感覚はわかるけど。え、うわ、変な汗かいてきた」
 桃色に火照った頬に、小さな雲のように疑念が湧くが気づかないふりをすることにした。そんなつもりで誘ったのではないと告げたばかりだ。
「あっつ……」
 舌を火傷したようで、焦って氷水を口に含み、小刻みに震える姿が滑稽すぎる。眺めるのも失礼かと、マグカップに視線を落とす。それでも苦しんでいるので、スマホを胸ポケットから取り出し、昨日からのアクセス数をチェックする。
 思ったより伸びていないな。
 鼓動が速まるのを防ぐため、急いで二本目に火をつけた。
「テンポ早いっすね。やっぱひと箱行くタイプですか」
 能天気な言葉に些か退席したい気持ちが過ぎったのを、黒い液体で飲み下す。
「年長なら敬語やめろ。後輩に敬語使ってたタイプじゃないだろ」
「んは。先輩に敬語使われてたでしょ。老け顔さん」
「ああ、お前みたいな奴にはな」
 やはり退席しようか。
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