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溶け合う煙のいざないに
第1章 あみだくじ

 赤いライトの下、片手の指ほどの歩行者が固まって今か今かと緑の明かりを待つ。たった一分ほどの静寂。芦馬は反対側の信号を見つめたまま言った。
「お前、どっちだ」
 車が何台も轟音を立てながら過ぎていく。
「オレ、ね……どっちでも出来るよ」
 トラックの大きな影が歩行者を影に落とした。それから太陽の光が戻ってくると、芦馬の目はこちらを向いていた。
 心なしか、笑っているようだった。
 度の入った眼鏡越しでは、気のせい程度だけど。
「助かる」
 え、待って。
 そのまま青信号になり、歩き出した背中を焦って追いかける。
「そ、そっちは?」
 心の準備というものがある。
 抱くのか抱かれるのかで、気の持ちようは百八十度とは言わないけど百二十度くらいは違うのだから。スタスタと歩みを止めない芦馬は目線も合わない。
「仕事は何時に上がる?」
 質問を質問で返すタイプだ。
「えっと、五時半には確実」
「あそこのブックカフェにいる」
 人差し指の差す方向を見ると、職場の斜め向かいの商業ビルだった。二階にはレストランと大きな書店が入っていて、たしかそこがブックカフェ形式だった。
 話は終わりとばかりに距離を離そうとする芦馬の肩を掴む。
「あ、ちょ。オレもまだ話したいのに」
「飽きるほど時間できるだろ」
 目線だけで手を退けろ、と指示された気がして急いで手を離した。それから向こう岸に渡るため芦馬は歩を止めてしまった。雑貨屋はこちらの岸にあるから、ここでお別れだ。
 休憩時間も残りわずか。
 約束も取り付けた。
 上出来のはずなのに、まだ、心臓が不安に騒いでいる。
「連絡先……は?」
 振り返ってくれそうにない耳に嘆願する。
 約束を破られたとしても別に仕方ないけれど、それを知る術がないのは耐えられない。これは待ち合わせの礼儀として必須のはず。
 眼鏡の淵が陽光を反射しながら、ゆっくりその中の両目が動いた。
 ああ、やっべえ好きかも。
 最初に見かけたときからの期待が爆発しそうになる。
「大丈夫。絶対にいる」
 拍子抜けするアナウンス音と共に、颯爽と遠ざかるコートを見つめる。数時間後の再会がまるで一年後のように遠い。
 それでも、嘘偽りない瞳に願いを込めて、職場に無理やり足を向けた。
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