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濡れた砂漠の村2
第1章 深緑の湖
暑くなってきたね。
そういって彼は窓を開け遠い目をしながら少し先を指差す。

あそこを曲がるよ。道が少し荒いけど、見せたい場所があるんだ。
彼らしく静かに、温かな言葉で言ったあと、微笑みをたたえた眼差しをくれる。

うん。この地域の、いろんなところを見てみたい。
私は心からそう思う。そして、車は獣道へと吸い込まれてゆく。ガタガタと縦に揺れる車。彼は優しく私の太ももへ手を添え、揺れの衝撃を和らげようとしてくれる。私は、その長い指を敏感に意識してしまう。

視界が開ける。といっても、目の前の松林が少し割れ目を見せたというところだろうか。その隙間から深緑の静かな湖が現れる。

ついたよ。少し涼もう。そういって車から飛び降りるように林の中は消える彼。私はぼんやりと湖を、そしてその周りは茂る松林、その後ろに聳え立つ灰色の山肌を眺める。

そして彼は、使い古されたカヌーのようなものを引きずり帰ってくる。
これに乗って、湖の隅々を見せたいのだという。

ここにはほぼ誰も来ない。そして午前中は日も山肌にかくれているから。そういって彼は美しい肌を、肢体を、もったいないほどそっけなくあらわにする。ほら、といって私を誘う。仕方なく私も全て脱ぎ捨て、カヌーへと近づく。
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