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独りの部屋
第28章 雨音の余韻

あずまやの柱に背を預け、濡れた前髪をかき上げると、彼女も同じように笑った。
「びしょ濡れだね、ふたりとも」
雨上がりの湿った風が、彼女のブラウスをやわらかくなでる。
生地が肌に貼りついて、輪郭を鮮明に浮かび上がらせていた。
視線を逸らしたくても、逸らせない。
「見てたでしょ」
ふいにそう囁かれて、息が詰まる。
彼女は近づいてきて、俺の胸元を掴んだ。
手首が震えていたのは、冷えているからか、それとも――
「こんなとこで……ダメだって思ってるくせに、顔に出てる」
唇が触れるより前に、濡れた指先が顎を持ち上げてくる。
そして、そっと、唇が重なった。
一瞬のくちづけ。
けれど舌が差し込まれた瞬間、身体の芯まで引き込まれるような熱が走る。
「ねえ、もっと……確かめて」
彼女の手が俺のシャツを滑り、腹部に沿って下りていく。
雨の冷たさとは対照的に、その指先は火傷するほど熱い。
ふたりきり。
濡れた夜の公園で、誰にも知られないまま、
静かに音を立てて、崩れていく。
完
「びしょ濡れだね、ふたりとも」
雨上がりの湿った風が、彼女のブラウスをやわらかくなでる。
生地が肌に貼りついて、輪郭を鮮明に浮かび上がらせていた。
視線を逸らしたくても、逸らせない。
「見てたでしょ」
ふいにそう囁かれて、息が詰まる。
彼女は近づいてきて、俺の胸元を掴んだ。
手首が震えていたのは、冷えているからか、それとも――
「こんなとこで……ダメだって思ってるくせに、顔に出てる」
唇が触れるより前に、濡れた指先が顎を持ち上げてくる。
そして、そっと、唇が重なった。
一瞬のくちづけ。
けれど舌が差し込まれた瞬間、身体の芯まで引き込まれるような熱が走る。
「ねえ、もっと……確かめて」
彼女の手が俺のシャツを滑り、腹部に沿って下りていく。
雨の冷たさとは対照的に、その指先は火傷するほど熱い。
ふたりきり。
濡れた夜の公園で、誰にも知られないまま、
静かに音を立てて、崩れていく。
完

