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独りの部屋
第5章 湯のぬくもり、肌の記憶
障子の向こうに、ぼんやりと雪の気配。
芯まで温まった身体を、薄い浴衣がそっと包む。
ぽたり、ぽたりと、湯上がりの髪から雫が落ちる。

彼は、窓辺に腰を下ろしていた。
湯気を含んだ空気のなかで、ゆっくりと私を振り返る。

「こっち、おいで」
たったそれだけで、胸がきゅっと縮んだ。
灯りが落ちた室内に、ふたつの影が近づいていく。

畳に膝をつき、彼の胸元に顔を寄せると、石鹸と湯の匂いがした。
「きれいだ」
浴衣の合わせをそっと外し、彼の手が私の肩に触れた。
そのぬくもりが、肌に染みていく。

指先が、鎖骨をなぞる。
ゆっくりと、確かめるように。
唇が、そのあとを追いかけてきた。じんわりと熱を残しながら。

「ここ、熱い…」
耳もとでそう囁きながら、彼の手が私の胸を包む。
掌のぬくもりに溶けて、息が漏れる。
雪の夜だというのに、身体の奥は火照っていくばかりだった。

浴衣が音もなく崩れ落ちる。
裸の肌と肌が重なり、畳が、やさしく軋んだ。
まるで、ふたりの想いを聞いているみたいに――。

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