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レッスンの仕方が間違っている!
第11章 3次審査当日
 そ、だ……時間っ、急がなきゃ。
 今、何時?

「もう9:16だよ?」

 どうやら本当に急がなければ間に合わない。

「でも、手が……」

 縛られたままの手首を見ながらこぼす。
 確信犯はニヤニヤと笑みを浮かべて狼狽える椿を見ている。

 くっ、何で!!

「ギリッんんーんーーー!」

 リボンを必死に噛みちぎろうと歯を立てる。
 手首が締め付けられてヒリヒリ痛む。
 でも今はそんなこと気にしない。

 外れない……どうしてっ!!

「このクスリ飲んだら外してあげてもいーよ?」

 男の歪んだ笑みが気味悪い。
 右手にカプセルをチラつかせて交渉してくる。

「わかった!早くしてよっ!?」

 悩まなかった。
 瞬時に決断、今はそれしかなかった。
 どんなクスリかはわからない。
 それでもカプセルなら、効き目が遅いことは椿も心得ていた。

 今は会場入りが最優先なんだ。
 そこで審査を受けられれば、後はどうなってもこっちのもんなんだから。
 致死量のはずがない。
 こんなヤツに人を殺す度胸なんて無い!!

「ほらよ……んんっクチュ……ん」

 口移しでクスリを飲まされる。
 もう慣れた。
 本人としては慣れたくもない行為ではあった。
 だが少なくともこの状況では、冷静に対応できた点で助かったともいえる。
 皮肉なものだ。
 引っ張ってコブがキツく締まったリボンが、男の手によって器用に解かれていく。

 ムカつくけどコイツ器用だな……
 良いとこはあるのに何でこんな変態なんだよ!?
 ダンスだってそれなりじゃないのか?
 歌だってかなり美味いのに。
 こんな姑息な手使わないでもっと自分の力信じて生かせよ!

 服を着終えて靴を履く。
 順調に出る手はずが整う。

「アンタのことは大嫌いだよ……でも才能はある。もうこんなことしないで正々堂々やんなよ。」

 何故かそんな台詞が口から漏れた。
 一瞬自分でもその言動を疑った。

 何言ってんだ僕!?
 コイツ最低なヤツだぞ?
 馬鹿だ……
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