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レッスンの仕方が間違っている!
第7章 3次審査まであと4日
「あれ……何で。」

 椿の目が開く。

「起きたのか?」

 思い出したくない!

 問われてもいないのに、ただ頭には拒絶しかなかった。
 椿は声を発するや否や、功の背中に顔を埋めた。
 本人は知らん顔だが一般人にとって、半裸の芸能人が大の男を背負い闊歩する姿は、目を向けすぎる訳にはいかない代物だった。
 故に、幸か不幸か……勿論のこと、集るファンは皆無だった。
 遠巻きに見る一般人。
 記者も居たかもしれない。
 それでもやはり、彼にとっては問題無いのだろう。

「……」
「暫く寝てて良い。」

 返事が無くても功は気にしなかった。
 ただ安心して欲しかったから。
 椿は思い出さなくてはいけない気がした。

 何で?…だっ‥けか……

 しかし功がそれを止めさせた。
 思い出したくないこともあると彼は知っていた。

「疲れたんだろ?」

 疲れた。

「椿?」

 深い眠りについて更に重くなる椿の身体。
 まだ3時前で日は高い。
 そして夏で人が密着するのは、耐え難いものがある。
 これでは夏の暑さに勝てない。

 熱い……

 彼の場合、別の意味も含まれるが。

「タクシー拾うか……流石にキツい。」

 功は本日2度目のタクシーを呼んだ。
 タクシー運転手からは、まず半裸について疑問を飛ばされた。
 暑いとだけ言ったのは問題だったかもしれない。
 否、問題ありありだったが、彼には問題で無かったのが正しい。
 無論、彼にとっての諸々の問題は背中に在った。
 幸い運転手は半裸についてそこまで詮索してこなかった。

 マンションに着くとあの長い階段を、再び椿を背負い5階まで上った。
 皮肉にも、本社4階で階段が無いことに苛々した自分を呪いながら、休み休み。

 部屋に入って見たら体中汗だくだった。
 椿をベッドに寝かせ、功は冷蔵庫から出してペットボトルの水を飲む。
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