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母なる果実
第3章 番外 果実の反芻

――ピロンッ。
突然、奇妙な機械音がそれを断ち切った。女は、はっとしてその音の方へ顔を向ける。恐らくスマホに何かの通知が来た音であろう。もしかして――と女は思った。しかし、こう言う時は大抵違うものだ。淡い期待を振り払うように小さく首を横に振って部屋へと戻る。
机のスマホを手に取り、ベッドに腰掛け、枕をそっと抱える。微かな動悸を感じながら、ふうと一呼吸。そして、意を決して通知に表示されている名前を確認した。
それを見た瞬間彼女は――曇天に突然差し込んだ春の陽射しのように、頬がふんわりと綻んだ。そして、身を乗り出してその名前にそっと指を触れる。
『今日会えますか?』
たった一言、それだけで先程までの葛藤が嘘のように、女の曇っていた心が一気に色付き晴れ渡った。見る前は、彼からの連絡であるわけがない、といった気持ちが強かったためか、その反動で喜びが今にも溢れ出しそうになり、思わず口元を手で押さえる。
『大丈夫だよ。何時頃に来れそう?』
平静を装っているつもりだけど、通知とほぼ同時に返事をしている時点できっとバレてる…。それでも、もう構わない。むしろちょっとくらい伝わってもいい――そんな気持ちが心の奥にあった。
『大分遅くなっちゃうと思う…いつも曖昧でごめんなさい』
『いいんだよ!来れそうになったらまた連絡ちょうだい?』
『わかった』
心をうきうきと弾ませ、枕をぎゅっと抱きしめながら、静かなやりとりをする。ふと指を止めると、画面にはまだ送信していない言葉が残されていた。
"早く会いたいな"
その隣では、カーソルが心臓の鼓動のように瞬いている。
――送ったら、迷惑かな…?
何度も悩んで首を傾げながら、視線をあちこちに彷徨わせる。しかし、ついに決心したように画面に向き直ると、力強く指を押し当てその文を送信した。
会話画面に表示されると同時に、すぐに既読がつく。その瞬間、どきっと心臓が跳ねた。鼓動が早くなるのを感じながら、まじまじと画面に釘付けになる。
突然、奇妙な機械音がそれを断ち切った。女は、はっとしてその音の方へ顔を向ける。恐らくスマホに何かの通知が来た音であろう。もしかして――と女は思った。しかし、こう言う時は大抵違うものだ。淡い期待を振り払うように小さく首を横に振って部屋へと戻る。
机のスマホを手に取り、ベッドに腰掛け、枕をそっと抱える。微かな動悸を感じながら、ふうと一呼吸。そして、意を決して通知に表示されている名前を確認した。
それを見た瞬間彼女は――曇天に突然差し込んだ春の陽射しのように、頬がふんわりと綻んだ。そして、身を乗り出してその名前にそっと指を触れる。
『今日会えますか?』
たった一言、それだけで先程までの葛藤が嘘のように、女の曇っていた心が一気に色付き晴れ渡った。見る前は、彼からの連絡であるわけがない、といった気持ちが強かったためか、その反動で喜びが今にも溢れ出しそうになり、思わず口元を手で押さえる。
『大丈夫だよ。何時頃に来れそう?』
平静を装っているつもりだけど、通知とほぼ同時に返事をしている時点できっとバレてる…。それでも、もう構わない。むしろちょっとくらい伝わってもいい――そんな気持ちが心の奥にあった。
『大分遅くなっちゃうと思う…いつも曖昧でごめんなさい』
『いいんだよ!来れそうになったらまた連絡ちょうだい?』
『わかった』
心をうきうきと弾ませ、枕をぎゅっと抱きしめながら、静かなやりとりをする。ふと指を止めると、画面にはまだ送信していない言葉が残されていた。
"早く会いたいな"
その隣では、カーソルが心臓の鼓動のように瞬いている。
――送ったら、迷惑かな…?
何度も悩んで首を傾げながら、視線をあちこちに彷徨わせる。しかし、ついに決心したように画面に向き直ると、力強く指を押し当てその文を送信した。
会話画面に表示されると同時に、すぐに既読がつく。その瞬間、どきっと心臓が跳ねた。鼓動が早くなるのを感じながら、まじまじと画面に釘付けになる。

