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僕の母さん
第11章 それぞれの姫始め
「もう!駄々っ子みたいに不貞腐れるのはやめなさいよ!」
マンションを出たところで、いつまでも腕を引っ張られるのはゴメンだと、彩也香は達郎の手を振りほどいた。
「別に不貞腐れてなんか…」
「そういう態度を不貞腐れているって言うのよ!
今回の事でハッキリしたわ、達郎はマザコンなのよ」
マザコンなんかじゃない!
僕は一人の女として母さんを愛しているんだ!
そのように反論したい言葉をグッと飲み込んだ。
神社に近づくにつれ、人の波が激しくなってきた。
うっかりすると離ればなれになってしまいそうなので、
口喧嘩をやめて彩也香から達郎の腕に自分の手をまとわせた。
神社は出店も出て賑やかだったが、
そのせいか家族連れも多く、出店で足を止める人もいたりして、一向に前に進めない。
警備員のおじさんが「お参りの最後尾はこちら」と書かれたプラカードを掲げて場内整理をしていた。
「境内にたどり着くのにどれぐらいの時間がかかりますか?」
彩也香がそのように訊ねると「そうだねえ…ざっと一時間はかかるかな?」と汗だくになりながら教えてくれた。
「一時間も立ちっぱなしなんてイヤだわ」
わがまま気ままな彩也香は整列して待つと言うことを嫌った。
「どうする?また今度にする?」
初詣なんて三が日のうちに来ればいいんだからさと達郎が言ってあげると「うん、そうする。寒くておしっこもしたくなっちゃったし」と家に帰りたいと言い出した。

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