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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第12章 いざ、情報収集のためにっ!

「いや、ね、七瀬のお母さん。なんでも持病で倒れたらしくてさ、後遺症があって入退院を繰り返しているんだって。父親は脳梗塞ですでに亡くなってて、彼女独りっ子だし、母親の面倒を見ながら仕事してるんだ」

「それは……大変ですね」
「そ、因みに七瀬の母親が倒れた時に救急車で運ばれた先が、森野のお兄さん――もとい、澪ちゃんのお父さんがいるところだったわけだ」

 ――あ、もしかして。
 須藤さんの言葉に、あたしは何かの結びつきを感じた。

「それってもしかして、お父さんが執刀医を?」
 あたしが訊ねると、須藤さんは、「察しが良いね」とウインクして、指を鳴らした。

「そういうこと。森野が澪ちゃんのお父さんを指名して、手術を薦めたんだ。結果、どうにか一命は取り留めたらしいんだけど、まだひとりで何かをしたりとか、外に出歩くことはほぼできないらしい。たまに有給使って休んでるな」

 そこまで言い終えると、須藤さんもお寿司を頬張る。
 2人とも、ただただ差し出された定食を頬張るあたしたち。
 沈黙しているあたしは、というと――。

 なんとも煮え切らない想いが胸の奥に宿る。
 姫美花さんって美人だけどすっごく優しい母親想いの女性なんだ。
 これって、あたしに勝ち目ないんじゃない?

 健気で尽くすことを知っている彼女。
 しかも美人。

 そんな姫美花さんの告白なら、男性は誰だって彼女に告白されたら飛びつくよね。


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