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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第5章 ハイスペックの裏に隠された本音。

「唯斗さん、起きてる?」

 ドアをノックして訊いてみるけれど、返事はない。
 やっぱりまだ起きていないのかな。

「唯斗さん? 朝ですよ~」
 実は昨日、唯斗さんには朝が苦手なことを打ち明けられて、起きないようなら起こしてほしいとお願いされたんだ。
 もう一度、ドアをノックしてみる。
 ……周囲は静かで、やっぱり返事はない。


「えっと……入りますよ?」
 誰に言うでもなくそっと声に出してドアノブを回す。
「失礼しま~す」
 ドアは何の抵抗もなく、ほんの少し軋んだ音を上げて開いた。

 窓のカーテンは閉まっていて、外はもうすっかり明るいのに、この室内だけはまだ薄暗い。
 ベッドを見れば、案の定、まだ布団にくるまった唯斗さんがいた。

「唯斗さん、朝だよ?」
 言われたとおりに起こしに来ました。
 あたしは唯斗さんに話しかけた。
「何時?」
 目が覚めたのか。
 唯斗さんは相変わらず布団にくるまったまま訊ねてきた。
 だけどまだ眠そうで、くぐもった鼻声が聞こえる。

「6時半過ぎました」
「もうちょっと寝かせて……」
 あらら、布団を頭からすっぽり被っちゃった。
 普段、出来る唯斗さんなだけに、こういうところが可愛く見えるから不思議。

 本当はもっとゆっくり寝かせてあげたいけれど、でも企画を煮詰めたいからって、昨日唯斗さん直々にお願いされちゃってるし。
 仕方がないよね。


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