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華のしずく~あなた色に染められて~
第26章 【月華―月姫(TSUKIHI)―~華のしずく~】 ~月華~
この早咲きの桜が月姫は大好きだった。春を待ち侘びている人の心に小さな希望の灯(ひ)をともしてくれる花。庭の片隅にポツンと忘れ去られたように立つ桜は今、紅いろの花をいっぱいにつけている。月姫はその真下に佇んで、大好きな桜を見ていた。
たわわに花をつけ、重たげにしなる枝の向こうに、蒼白い月が浮かんでいる。透き通る月光が真っすぐに降り注ぎ、月姫と桜を淡い宵闇に浮かび上がらせている。月姫は両手に持っていた緋の傘を持ち直し、くるくると回してみた。
たわわに花をつけ、重たげにしなる枝の向こうに、蒼白い月が浮かんでいる。透き通る月光が真っすぐに降り注ぎ、月姫と桜を淡い宵闇に浮かび上がらせている。月姫は両手に持っていた緋の傘を持ち直し、くるくると回してみた。