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華のしずく~あなた色に染められて~
第27章 【月華~月姫-TSUKIHI-~華のしずく~】 幻の蝶
秀友の妻は京の公卿の姫で、定子は公家の血を引いているのだと聞いた。が、座敷に案内されたものの、かれこれ半刻以上にもなろうというのに、定子は一向に姿を現さない。流石の月姫も少し持て余し気味になってきた頃、漸く〝お方様のお渡りにございます〟と先触れの侍女の声が響いた。
襖が静かに開き、衣ずれの気配が聞こえた。
月姫が両手をつかえて頭を深く下げると、やがて上座で衣ずれの音が止まる。