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華のしずく~あなた色に染められて~
第27章 【月華~月姫-TSUKIHI-~華のしずく~】 幻の蝶

小首を傾げた月姫の眼の前にあるのは、小さな、手のひらにやっとのるほどの大きさの箱であった。朱塗りの箱の蓋には、二羽のつがいの揚羽蝶が戯れ飛んでいる。いかにも睦まじげに寄り添い合う黒揚羽と黄揚羽は、夫婦(めおと)であろうか。月姫の蒼い眼に大粒の涙が盛り上がった。
「そなたと出逢うて、もう四年にもなる。何故か、この桜の季節になると、あのときのことを思い出すのだ。あの夜、そなたはまるで蒼き蝶と戯れているかのように見えたが―、不思議な美しき光景であった」
「そなたと出逢うて、もう四年にもなる。何故か、この桜の季節になると、あのときのことを思い出すのだ。あの夜、そなたはまるで蒼き蝶と戯れているかのように見えたが―、不思議な美しき光景であった」

