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第29章 【剣（ＫＥＮ）～華のしずく～】　決意

　その言葉を聞いて、龍伍はそのまま番屋に向かった。番屋の前には、既に人だかりはなかった。龍伍が顔を覗かせると、岡っ引きの留五郎(とめごろう)と同心の顔が見えた。留五郎はこの界隈を縄張りにしている三十過ぎの岡っ引きである。
「留五郎親分」
　龍伍が呼ぶと、留五郎が振り向いた。岡っ引きにしては、情もあると評判の男である。
　龍伍の「弟」たちが働いた盗みをこれまでにも何度か見逃してくれたこともある。