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華のしずく~あなた色に染められて~
第30章 【剣(KEN)~華のしずく~】 闇に喚ばれし者
 揶揄するような物言いに、主は肩をすくめる。
「まあ、次の持ち主が現れる頃には、婆さんはもちろん、儂も生きてはおるまいよ」
「それもそうじゃな」
 老婆がしわがれ声で笑い、古道具屋は辻占の婆に背を向けた。
 二人のやりとりなぞ知らぬげに、大勢の人々がせわしなく往来を行き交う。その雑踏の中に主の太った身体も呑み込まれ、直に見えなくなった。
 初夏の陽光が容赦なく道に照りつける。老婆がふと顔を上げ、細い眼を眩しげに細めた。

   (【剣(KEN)~華のしずく~】了)
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