この作品は18歳未満閲覧禁止です
華のしずく~あなた色に染められて~
第1章 【華のしずく】 ~出逢い~
毎朝早く、町に行商に出る前、珠々は洗濯をしにこの場所に来る。今日は早なりの石榴を幾つか採って帰ろうかと算段していた。そのために、籠もちゃんと用意してきた。珠々がそんなことを考えながら、石榴の樹を眺めていると、背後で馬のいななきが高く聞こえた。ハッとして振り向くと、珠々のすぐ後ろで逞しい馬が脚高く上げて、いなないていた。見事な鹿毛で、馬上には武士らしい出で立ちの若者が一人、無表情に珠々を見下ろしている。