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華のしずく~あなた色に染められて~
第8章 【雪の華~華のしずく】 三
徳姫は一言も聞き逃すまいと、貞心院の昔語りに全ての神経を傾ける。貞心院の眼差しは再び過ぎ去った日々を見つめているようだった。
「私と亡き殿―実徳院さまとの出逢いは、あまりにも突然でした。私は、なかなか殿に心を開くことができなかった―、そう、丁度、今のそなたのように殿をただひたすら怖いと思うていたのです。あの方の御前に出ると、ただそれだけで身体が竦んで、慄え出してしまう。殿のお側に出る度に、いつも逃げ出したいと、ただそればかりを考えていました」
「私と亡き殿―実徳院さまとの出逢いは、あまりにも突然でした。私は、なかなか殿に心を開くことができなかった―、そう、丁度、今のそなたのように殿をただひたすら怖いと思うていたのです。あの方の御前に出ると、ただそれだけで身体が竦んで、慄え出してしまう。殿のお側に出る度に、いつも逃げ出したいと、ただそればかりを考えていました」