この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
華のしずく~あなた色に染められて~
第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】
だが、この城も秀吉軍に包囲され、落城も時間の問題であった。今、廊下を辿っていても、遠方から敵兵たちの雄叫びが潮騒のように押し寄せ、鉄砲の音が城を揺るがしている。わずかに十歳のおふうは怖ろしさのあまり、今にも正気を手放しそうでさえあった。
おふうは城の奥向きを取り仕切る侍女頭の楓に仕えている。正確に言えば、楓に直接仕えているわけではなく、楓付きの若い奥女中
千鳥に付き従っている。おふうのようなおはしたは、侍女というよりは下女と言った方が良く、その仕事も水汲みや洗濯といった雑用が多い。
おふうは城の奥向きを取り仕切る侍女頭の楓に仕えている。正確に言えば、楓に直接仕えているわけではなく、楓付きの若い奥女中
千鳥に付き従っている。おふうのようなおはしたは、侍女というよりは下女と言った方が良く、その仕事も水汲みや洗濯といった雑用が多い。