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華のしずく~あなた色に染められて~
第10章 【紫陽花~華のしずく~】一
初め、父からこの話を聞いた時、明子は我が耳を疑った。なにゆえ、我が身がわざわざ東方の身分も卑しい戦国武者の許へ嫁がねばならぬのかという衝撃もあったが、何より彼女を打ちのめしたのは、正室、つまり北の方としてではなく、側室として迎えられるという事実であった。側室といえば、妾ではないか。落ちぶれたとはいえ、明子は時の将軍の姫である。その姫を迎え入れるのに、側妾としての待遇を与えるなぞ、考えられもしなかった。