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華のしずく~あなた色に染められて~
第19章 【花紋~華のしずく~】 二
「何度申したら判るのだ、平八郎で良いと申したであろう」
平八郎というのは信斉の呼び名である。数日前、思いがけず館の近くの温泉で信斉と出くわし、結ばれた―と言うよりは、半ば手込めにされたのも同然の行為であった。
以来、信斉は毎日のように麗子の館に通い、臥床を共にする日々が続いている。
「いつまで、このままでいる気だ?」
苛立った信斉の声に、麗子は淡く微笑む。依然として、視線は空へ向けたままで。