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華のしずく~あなた色に染められて~
第22章 其の壱~飛花~
その折、親しく二人を傍へ招き、その遊びぶりを眺めていると、千菊丸は庭の牡丹の花に止まっていた美しい揚羽蝶をいきなり捕らえ、虫籠に入れたいと駄々をこね始めた。それを傍らの兄松若丸がなだめ、捕らえた蝶を再び空へと逃してやった。その一部始終を見た秀吉はこう言った。
―余が天下を平定し、長き動乱の世も終わった。これより後は、松若丸のような情けを持った人間が徳をもって世を治め、政(まつりごと)をする時代となろう。