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華のしずく~あなた色に染められて~
第24章 【夕桜~華のしずく~】 其の参~山梔子(くちなし)の夜~
静寂が辺りを満たしていた。
勾玉のような透き通った月が淡い光を地上に投げかけている。急に山梔子の花の香りが強くなったように思え、帰蝶は息苦しさにむせそうになった。
先に沈黙を破ったのは秀康の方であった。
「これで俺という男がどんな人間か嫌というほど判ったであろう。ただでさえ憎うてならぬほど嫌いな男のことだ、最早、愛想も尽き果てたのではないか」
その口ぶりはいつものように皮肉げでもなく、ただ哀しげな響きがあるだけであった。
勾玉のような透き通った月が淡い光を地上に投げかけている。急に山梔子の花の香りが強くなったように思え、帰蝶は息苦しさにむせそうになった。
先に沈黙を破ったのは秀康の方であった。
「これで俺という男がどんな人間か嫌というほど判ったであろう。ただでさえ憎うてならぬほど嫌いな男のことだ、最早、愛想も尽き果てたのではないか」
その口ぶりはいつものように皮肉げでもなく、ただ哀しげな響きがあるだけであった。