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助教 沙霧
第5章 通勤路 ~電車内の妄想~
 朝の通勤快速。
 無機質な銀色の車両は、通勤客と学生を限界まで飲み込み、逃げ場のない鉄の箱と化していた。

 沙霧はドアの脇、わずかな隙間に体を押し込まれるようにして立っていた。吊り革を掴む余裕さえない。周囲を男たちの無骨な肩や背中に囲まれ、彼女の華奢な、しかし肉感的な身体は、否応なく他者の体温に晒されていた。
 昨夜、誉から届いたメッセージの文面が、網膜の裏側にこびりついて離れない。

『貴女の言葉をなぞるたび、その凛とした静寂の下で、行き場を失った熱い雫が滴り落ちる音を聴くような心地がいたします。師よ、貴女はどれほど長く、その孤独な檻の中に自身を閉じ込めてこられたのでしょうか』

 その一節が、今のこの異常な密着状態と重なり、沙霧の理性をじりじりと削り取っていく。
 右肩には見知らぬ中年男性のコートのざらついた感触があり、左側からは若い男の放つ、微かな汗と整髪料の匂いが漂ってくる。普段なら吐き気をもよおすような不快な刺激。だが、今の彼女にとって、それは自分を辱めるための舞台装置に他ならなかった。

 電車が大きく揺れた。
 慣性に抗えず、沙霧の豊かな胸が、目の前に立つ男の背中に強く押し付けられる。

「……っ」

 咄嗟に声を殺したが、薄いブラウス越しに伝わる他人の硬い感触が、彼女の乳首を無慈悲に刺激した。心臓の鼓動が、自分でも驚くほど激しくなる。
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