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助教 沙霧
第8章 仮面の日常(2)
 目覚めは最悪だった。

 重い瞼を押し上げると、昨夜、快楽と自失の果てに放置された部屋の空気が、淀んだ熱を持って肌にまとわりついてくる。沙霧は、這い出すようにしてベッドを抜け出し、冷水のシャワーを浴びた。昨夜の「いとなみ」の痕跡を、文字通りすべて洗い流してしまいたかった。

 しかし、石鹸の泡で自分の身体をなぞるたび、指先が覚えている感触が、脳内に鮮明な残像を描き出す。誉という仮想の主に捧げた、あの無様な喘ぎ声と、床に伏した自分の惨めな姿態。。。

 鏡の前の沙霧は、濡れた短い黒髪をかき上げ、自分自身を険しく睨みつけた。
 
「……馬鹿なことを」
 
 独り言は冷たく響いたが、その声はどこか湿り気を帯びていた。
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