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助教 沙霧
第9章 秘密のいとなみ ~自宅の浴室~
 沙霧はシャワーを浴び、熱い湯で全身をなぞった。
 汚れを落とすための行為のはずが、肌を滑る水の感触は、いつの間にか誉の指先へと変換されていく。彼女は目を閉じ、タイルの壁に額を押し当てた。冷たいタイルの感触が、火照った皮膚に心地よい刺激を与える。

 脳裏に浮かぶのは、浴室の片隅で、着衣のまま静かに自分を見下ろす誉の幻影だった。
 
 ――師よ。貴女のその肉体は、古典の注釈書よりも雄弁に、真実を語っています。
 
 誉の声が、シャワーの音に混じって鼓膜を震わせる。
 沙霧は震える指で、自らの太ももの内側をなぞった。ストッキングから解放されたばかりの肌は敏感で、わずかな摩擦にも過剰に反応する。

(あ……っ……)

 沙霧の耳に、姿なき誉の静かな、しかし拒絶を許さない命令の声が響く

 ――自分で、私に見せなさい。貴女が言葉の下に隠し持っている、その卑しい渇きを。

 沙霧は膝をつき、タイルの床に四つん這いになった。
 排水口へと流れていく水音が、沙霧の理性を洗い流していく。片手で自分の乳房を強く握りしめ、もう一方の手を、自身の最も秘められた場所へと沈めてゆく。

 昼間、演習で扱ったあの和歌が、呪詛のように脳内を駆け巡る。

   『忍ぶれば 弱りはつるを……』

 そう、忍ぶことは、死に等しい。
 これほどまでに熱く、重く、だらしなく蕩けてしまったこの身体を、もはや自分一人では支えきれない。 
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