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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第104章 ほだされた情愛
ひとしきり仕事のやりがいや失敗談を聞き終えた頃、カクテルのグラスは二節目を迎えていた。時雨崎の表情はかなり和らぎ、心を開ききった少年のようになっている。澪は彼が話し疲れて沈黙が戻るのを防ぐため、さらに踏み込んだ質問を重ねることにした。
「それにしても、どうしてホテルマンになろうと思ったの? 律弥くんの生い立ちというか、これまでのこと、まだ全然知らないから聞いてみたくて」
澪がグラスの縁を見つめながら静かに尋ねると、時雨崎は一瞬だけ照れくさそうに頭を掻き、それから少し遠い目をして語り始めた。
「僕の家、母子家庭だったんです。小さい頃に父親がいなくなって、それからはずっと母親が一人で僕を育ててくれました。決して裕福とは言えない、というか、どちらかと言えばかなり恵まれない環境だったと思います。周りの友達が持っているものを羨ましいって思うことも、正直たくさんありました」
これまでの強気でやや生意気な態度からは想像もつかない、どこか寂しげな、しかし芯のある横顔だった。時雨崎はカクテルを一口含み、言葉を続ける。
「でも、母親は自分のパートの時間を増やして、身を粉にして働いて、僕をホテルの専門学校に通わせてくれたんです。『あんたには立派な大人になってほしいから』って、自分の服一枚買うのも我慢して、学費を工面してくれました。だから僕、どうしてもこの世界で一人前になって、早く母親に恩返しをしないといけないんです。仕送りもたくさんして、楽をさせてあげたくて……だから、毎日必死なんです」
真っ直ぐな瞳でそう語る二十歳の青年の言葉には、一切の嘘偽りも、虚飾もなかった。ただ純粋に、自分を育ててくれた母親への感謝と、親孝行をしたいというひたむきな義務感だけがそこにあった。
「それにしても、どうしてホテルマンになろうと思ったの? 律弥くんの生い立ちというか、これまでのこと、まだ全然知らないから聞いてみたくて」
澪がグラスの縁を見つめながら静かに尋ねると、時雨崎は一瞬だけ照れくさそうに頭を掻き、それから少し遠い目をして語り始めた。
「僕の家、母子家庭だったんです。小さい頃に父親がいなくなって、それからはずっと母親が一人で僕を育ててくれました。決して裕福とは言えない、というか、どちらかと言えばかなり恵まれない環境だったと思います。周りの友達が持っているものを羨ましいって思うことも、正直たくさんありました」
これまでの強気でやや生意気な態度からは想像もつかない、どこか寂しげな、しかし芯のある横顔だった。時雨崎はカクテルを一口含み、言葉を続ける。
「でも、母親は自分のパートの時間を増やして、身を粉にして働いて、僕をホテルの専門学校に通わせてくれたんです。『あんたには立派な大人になってほしいから』って、自分の服一枚買うのも我慢して、学費を工面してくれました。だから僕、どうしてもこの世界で一人前になって、早く母親に恩返しをしないといけないんです。仕送りもたくさんして、楽をさせてあげたくて……だから、毎日必死なんです」
真っ直ぐな瞳でそう語る二十歳の青年の言葉には、一切の嘘偽りも、虚飾もなかった。ただ純粋に、自分を育ててくれた母親への感謝と、親孝行をしたいというひたむきな義務感だけがそこにあった。

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