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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第95章 女体の摂理がもたらす刹那の静けさ
本社ビルを出た雄一と澪は、何なにに弾かれるようにして一台のタクシーへと滑り込んだ。鬼頭から送られてきた住所を運転手に告げると、車は静かに滑り出す。
車内には、先ほどの応接室での悍おぞましい空気の残滓ざんしがべっとりと張り付いていた。雄一は澪の手を強く握りしめていたが、その手は痛いほどに冷え切っている。澪は窓の外を見つめたまま、まるで魂を吸い取られた人形のように微動だにしない。明日の夜には西新宿のマンションで鬼頭にすべてを奪われ、術もなく蹂躙される。その確定した未来が、目に見えない巨大な鎖となって二人の首を絞めつけていた。
タクシーが到着したのは、都内の一等地にひっそりと佇む、看板すら出ていない高級雑居ビルだった。外観からはおよそ医療機関だとは分からない。エレベーターで指定された階へ上がると、そこにはホテルのラウンジと見紛うほどの贅沢な空間が広がっていた。完全予約制、かつ完全個室。他の患者と顔を合わせることは絶対にない、まさに訳ありの人間たちが極秘裏に利用する特別なクリニックだった。
受付を済ませると、二人はすぐに奥の診察室へと通された。
白衣を纏った初老の医師は、鬼頭から事前に連絡を受けていたのだろう、二人の沈痛な面持ちを気にする風でもなく、淡々と、しかし極めて事務的に話し始めた。
「鬼頭社長からお話は伺っています。今後の確実な避妊処置ですね。当院では『ミナーレ』という処置を行います。一般的には避妊リングとも呼ばれている、子宮内に小さな器具を留置するシステムです。これさえ装着すれば、今後のいかなる状況においても、妊娠の可能性をほぼ確実に遮断することができます」
医師はデスクの上に小さな模型を置き、説明を続ける。その淡々とした口調が、かえって澪がこれから置かれる「他の男たちに好きにされるための身体にされる」という冷酷な現実を際立たせていた。雄一は胃の腑がねじ切れるような痛みに耐えながら、医師の言葉をじっと聞くしかなかった。
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