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「今日は大丈夫だから、着けなくていいよ」〜安全日という神話
第1章 「安全日」という神話
丁寧な前戯と愛撫で彼女の緊張と気分を解きほぐし、その気にさせ、濡れ具合も十分に、いざと、薄さ0.1mm以下のポリウレタン製を装着……しようとしたら、

「着けなくていいよ」

艶っぽい濡れた声で彼女が言う。さらに、

「今日は安全日だから」

熱い息とともにささやく。

こんなシーンは、小説の中のフィクションではなく、リアルでも遭遇する。

言われた男としては、選択肢は二つだ。彼女の「安全日」の言葉を頼りに「着けない」か、それとも、諸々のリスクを回避すべく「着けなくていい」と言ってくれたのに、あえて「着ける」のか? ここで「ちょっと待って、考えるから」などと、熟考するのもおかしな雰囲気になるので、男として、どうするのかを瞬時に決めねばならない。

私としては、過去に遭遇したこんなシーンにおいて「着ける」を選択したことは一度もない。「着けなくていいよ」「中で出してもいい」と言ってくれた彼女の思いを汲み取り、さらに、己の欲望を鑑みて、そういうシーンに臨んできた。

しかしだ。

二十代から三十代にかけては、そんな風に若さゆえの勢い任せのセックスでも有りかもしれないが、男と女のあいだの、いろいろな経験や失敗を積んできた中年世代以降になると、思いも事情も違ってくる。

まず「安全日」というのは絶対の安全を保証するものではない。ただの確率だ。女性の排卵日の周期から、妊娠する確率が低い日を「安全日」と称する。さらにだ。排卵日周期は前後することも多く、その正確なタイミングを知るには、日々の基礎体温の変化を記録する必要がある。この方法は男が考えているよりもはるかに面倒くさい。ちなみに、私の過去において、基礎体温をつけている彼女は一人もいなかった。それなのになぜ彼女らが「安全日だから大丈夫」と言えるのか、その理由を尋ねたら、

この前の生理から、自分の周期に当てはめ、なんとなく大丈夫だと思ったから

その時々で言葉は違えど、同じ意味の答えを、当時の彼女から聞いた経験がある。私がまだ二十代の頃に「よくわからない」と言った彼女もいて、ものすごく困惑した経験もある。
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