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禁忌の鍵を外す夜【短編】
第1章 禁忌の鍵を外す夜
「……そんなことを仰って、私を試さないでください。桃花…」
初めて呼ばれた名前に、頭の芯がじわりと溶ける。
白城の大きな手が、私の頬から首筋、そして鎖骨のラインへと滑り落ちた。
引き寄せられるように、二人の距離が完全にゼロになる。彼の端正な顔がすぐ目の前にあり、お互いの熱い吐息が唇に吹きかかる。
「…本当は、明日が来なければいいと……、あの男の元へ行くあなたを、この手で壊してでも拐ってしまいたいと、不敬なことばかり考えてしまっています」
彼の低い声が、鼓膜を優しく侵食していく。
白城の親指が、私の下唇を少し強めに押し開くようにそっとなぞった。
キスをされる、そう確信して目を閉じた。
もどかしいほどの至近距離で、私たちは互いの激しい鼓動を肌越しに感じ合う。
白城の唇が私の唇に触れ、その柔らかさと熱さに身体が震えた。
──けれど、彼は深く貪る寸前で、強引に自らの唇を引き剥がした。
「……お身体に障ります。今夜はもう、お休みください」
狂おしいほど名残惜しそうに私の額に軽い口づけを落とすると、彼は逃げるように部屋を後にした。
これが、私たちの最後の夜。
そう、諦めていた──。

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