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第1章 左手の包帯

僕、矢野弥誌の左手首には包帯が巻かれている。

いや、中二病とかじゃなくて。

ほら、よくあるだろう？

こう…リストカットした痕を隠すように…

リストバンドをはめるとかさ？

僕の場合、範囲が広すぎてリストバンドじゃ隠しきれないから包帯。

リスカ痕じゃないけどね!!

似たようなものだけれど。

僕のはー…


ーガリガリ…ー


引っ掻いちゃうんだ。

よくイライラしたり、緊張したりすると爪を噛む人がいるよね。

あの容量で掻いちゃうの。


リストカットより傷跡は醜い。

なんせ包帯なんて巻いているからいろんな意味で目立つ。

治さないと。

なおさないと。

そうは思っているけれど、

やっぱり癖っていうのは染み付いちゃっているもので。



「はぁ…」

自分の左手首を見て溜め息を吐く。


いつからこんな癖がついたんだっけ?





ああ、

…多分あの頃だ。