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姉枕
第1章 東京……十八歳
 最初は怖くて乗りたくなかったジェットコースターにも、姉さんの手を引っ張って自分から乗りに行った。屋内のコースターで二人乗りとあって、テレビで見る遊園地のようなジェットコースターではなかったけど、それでも初めて味わう落下の浮遊感や激しい横揺れに、僕は興奮の雨あられで乗り終えたあとは、額が汗でびっしょり濡れてしまっていた。
 姉さんは「怖かった」と言っていたけど、意外とけろりとしていて、バッグからハンカチを取り出すと、次はどれに挑戦しようかと熱心にパンフレットを見ている僕の額を拭ってきた。
「次はどれにするの?」
 姉さんがパンフレットを覗き込むようにして、顔を近づけて言う。
「うーん。今考えているのは、コレか、コレか……」
「ねえ、お化け屋敷は? ここで一番人気のアトラクションみたいやで。さっきお化け屋敷の前を通ったとき、それほど並んでいなかったから、けっこう早くに入れそうやで」
「……いや、お化け屋敷は、ちょっとつまんなさそうや」
 あまり触れてほしくなかったので、つっけんどんに僕は言い返した。
「ええ!? はる、あんた、ほんまは怖いんやろ~」
 僕の横腹を突っつきながら、姉さんはあおってきた。
「んなことあるか。お化けといっても、どうせ偽物やん」
「じゃあ、行こうよ。お姉ちゃん、行ってみたいなぁ」
 姉さんがわざとらしく甘えた声で囁いてきた。
「そう? ま、まあ、ええよ。そんなに行きたいんやったら。別に怖くないと思うけど」
 僕は口を尖らせながら了承した。すると、姉さんはうふふ、と笑った。久しぶりに意地悪な姉さんを見た気分だ。
 ずっと同じ屋根の下に暮らしていたから、僕が極度にお化けを怖がることを充分に知ったうえで、誘ってきているのだ。でも、僕だって、もう子供ではない。東京に出て、前よりも綺麗になった姉さんの前でビビっている姿など見せたくなかった。
 お化け屋敷の前はやっぱり長い行列になっていた。女の子ばかりのグループもいたけど、七割以上がカップルで、手をつないでいたり、女の子が男の腕にしがみついたり、逆に男が女の子の腰に手を回したりしていた。
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