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姉枕
第1章 東京……十八歳
姉さんが想像していたよりも綺麗な大人の女性になっていたからだ。もう僕なんかでは手の届かない存在になったように思えた。だけど、姉さんは変わらず仲良くしてくれて、東京の街を案内してくれた。それこそしっかり者の姉気取りで、見る物すべてに驚く僕を見て、嬉しそうに微笑んでいた。そのくせ、お化け屋敷では腕を組んできて、しばらく離そうともしなかった。もしかして、姉さんも……。
だけど、僕たちの関係は一年前に終わっているはずだった。
あの事件のあった翌朝、姉さんが僕を置いて出て行ったときに。
今でも鮮明に覚えているのは、姉さんが家を出る前に見せた笑顔だ。一晩中泣きはらしていた姉さんはむくんだ顔のまま、「手紙、書くからね」と僕に耳打ちしたあと、慈しむように目を細めて微笑んだ。
それは僕が幼少期に見たことのある〝お姉ちゃんの笑顔〟だった。
だけどここ数年は見ていなかった。僕がよく見ていたのは、あの秘密の行為を終えたあとの、美味しいものを味わいつくしたような、いやらしくも満足げな笑みだった。
笑顔が変わったことで、僕は姉さんが普通の姉に戻ったと感じた。
離ればなれになってからも姉さんは約束通り、月に二回は僕宛に手紙を送ってくれた。
もともと筆まめな人だったけど、いつも長い手紙で、東京での楽しい生活がつらつらと書かれていた。逆にいえば、一人暮らしの寂しさなどみじんも感じさせなかった。もちろん、僕と姉さんのあいだにあった誰にも言えないことは、二人だけの手紙の中でも触れてこなかった。姉さんは、もうあのことを忘れようとしていると、僕は思った。
今回、僕が東京に来た理由は二つある。
一つは、ただただ姉さんに会いたかったからだ。たとえ、姉さんが普通の「姉」に戻っていてもかまわなかった。東京での新生活を楽しんでいる姉さんを、ただ一人の弟として見たいと思った。それ以上のことは期待していない、といったら嘘になるけど、何もなければないで僕も諦めがついて、生まれ変われるような気がした。
実際、今日一日、僕は弟であろうとした。初めての大都会に感動して、姉さんと遊ぶことを夢中で楽しんだ。
だけど、僕たちの関係は一年前に終わっているはずだった。
あの事件のあった翌朝、姉さんが僕を置いて出て行ったときに。
今でも鮮明に覚えているのは、姉さんが家を出る前に見せた笑顔だ。一晩中泣きはらしていた姉さんはむくんだ顔のまま、「手紙、書くからね」と僕に耳打ちしたあと、慈しむように目を細めて微笑んだ。
それは僕が幼少期に見たことのある〝お姉ちゃんの笑顔〟だった。
だけどここ数年は見ていなかった。僕がよく見ていたのは、あの秘密の行為を終えたあとの、美味しいものを味わいつくしたような、いやらしくも満足げな笑みだった。
笑顔が変わったことで、僕は姉さんが普通の姉に戻ったと感じた。
離ればなれになってからも姉さんは約束通り、月に二回は僕宛に手紙を送ってくれた。
もともと筆まめな人だったけど、いつも長い手紙で、東京での楽しい生活がつらつらと書かれていた。逆にいえば、一人暮らしの寂しさなどみじんも感じさせなかった。もちろん、僕と姉さんのあいだにあった誰にも言えないことは、二人だけの手紙の中でも触れてこなかった。姉さんは、もうあのことを忘れようとしていると、僕は思った。
今回、僕が東京に来た理由は二つある。
一つは、ただただ姉さんに会いたかったからだ。たとえ、姉さんが普通の「姉」に戻っていてもかまわなかった。東京での新生活を楽しんでいる姉さんを、ただ一人の弟として見たいと思った。それ以上のことは期待していない、といったら嘘になるけど、何もなければないで僕も諦めがついて、生まれ変われるような気がした。
実際、今日一日、僕は弟であろうとした。初めての大都会に感動して、姉さんと遊ぶことを夢中で楽しんだ。

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