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姉枕
第1章 東京……十八歳
姉さんの、あの匂いを、かすかでもいいから感じようとしていた。
姉さんは東京駅構内にあるパン屋と喫茶店が合体したようなお店に連れていってくれた。
僕はカツサンドとオレンジスカッシュ、姉さんはハムサンドとホットコーヒーを頼んだ。
姉さんは僕と会えたのが嬉しいみたいで、ずっと微笑んでいた。コーヒーカップを口につけるときも、僕から目を離さず、ニヤニヤしていた。僕は姉さんと視線が合うたび、「これ、うまいわ」とか「姉さん、ここよく来るの?」とか目を逸らして、どうでもいい会話をした。
どうにも落ち着かないまま朝食を食べ終えると、姉さんが信じられないことを言い出した。これからタクシーに乗るというのだ。
「あかんって。めっちゃお金かかるやろ?」
そもそも僕はタクシーに乗ったことがなかった。姉さんだって地元にいた頃は使ったことがなかったはずだ。
僕たちは貧乏な家の子である。
「かまへん、かまへん。お姉ちゃん、いまはけっこうお金もあるから」
「でも……」
「ええから。今日は、お姉ちゃんに任せておき」
姉さんは僕の返事も聞かず伝票を手に、席を立ち、そそくさとレジのほうに歩き出した。
結局、姉さんの勢いに押されるまま、東京駅のタクシー乗り場から黄緑色のタクシーに乗った。
姉さんはタクシーに乗ることにも慣れている感じで、さっそうと後部座席に乗り込むと「とりあえず、霞ヶ関までお願いします」と、丁寧な口調で運転手さんに告げた。
「霞ヶ関?」
僕は聞いた。同時にタクシーがゆっくりと発車した。
「うん。はるに見せてあげたいものがあるねん」
座席に浅く腰掛けた姉さんは、小さなバッグを膝の上に置いて、両脚を閉じていた。だけど座るとワンピースの裾が少し上がるから、色白のふくらはぎが露出していた。ふくらはぎも、ヒールを履いた足首も、以前よりほっそりしていた。
「そのあとは、お台場に行くからね」
姉さんの足を見ていると、話しかけられた。
「お台場?」
霞ヶ関もお台場も、なんとなく聞いたことのある地名だったが、東京のどのあたりにあるのかさっぱりわからない。東京といえば、東京タワーと浅草ぐらいしか知識がなかった。
姉さんは東京駅構内にあるパン屋と喫茶店が合体したようなお店に連れていってくれた。
僕はカツサンドとオレンジスカッシュ、姉さんはハムサンドとホットコーヒーを頼んだ。
姉さんは僕と会えたのが嬉しいみたいで、ずっと微笑んでいた。コーヒーカップを口につけるときも、僕から目を離さず、ニヤニヤしていた。僕は姉さんと視線が合うたび、「これ、うまいわ」とか「姉さん、ここよく来るの?」とか目を逸らして、どうでもいい会話をした。
どうにも落ち着かないまま朝食を食べ終えると、姉さんが信じられないことを言い出した。これからタクシーに乗るというのだ。
「あかんって。めっちゃお金かかるやろ?」
そもそも僕はタクシーに乗ったことがなかった。姉さんだって地元にいた頃は使ったことがなかったはずだ。
僕たちは貧乏な家の子である。
「かまへん、かまへん。お姉ちゃん、いまはけっこうお金もあるから」
「でも……」
「ええから。今日は、お姉ちゃんに任せておき」
姉さんは僕の返事も聞かず伝票を手に、席を立ち、そそくさとレジのほうに歩き出した。
結局、姉さんの勢いに押されるまま、東京駅のタクシー乗り場から黄緑色のタクシーに乗った。
姉さんはタクシーに乗ることにも慣れている感じで、さっそうと後部座席に乗り込むと「とりあえず、霞ヶ関までお願いします」と、丁寧な口調で運転手さんに告げた。
「霞ヶ関?」
僕は聞いた。同時にタクシーがゆっくりと発車した。
「うん。はるに見せてあげたいものがあるねん」
座席に浅く腰掛けた姉さんは、小さなバッグを膝の上に置いて、両脚を閉じていた。だけど座るとワンピースの裾が少し上がるから、色白のふくらはぎが露出していた。ふくらはぎも、ヒールを履いた足首も、以前よりほっそりしていた。
「そのあとは、お台場に行くからね」
姉さんの足を見ていると、話しかけられた。
「お台場?」
霞ヶ関もお台場も、なんとなく聞いたことのある地名だったが、東京のどのあたりにあるのかさっぱりわからない。東京といえば、東京タワーと浅草ぐらいしか知識がなかった。

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