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近くて甘い
第58章 社長夫人のお受験
━━━━━━…


電車の改札を出ると、私はバス停に並んだ。


列には、私と同じ行き先と思われる人たちが、懸命に単語帳を持っている。



きっとみんな受験生だ…。



張りつめるその空気に段々と身体が緊張していく。


大丈夫、大丈夫だから。



単語帳をコートのポケットにしまうと、私は、カバンから梨子たちからもらったお守りを取り出した。




「最後は神頼み…だよね…」



一人でそんなことをつぶやくと、私はそのお守りを単語帳とは逆のコートのポケットにしまった。


それと同時に、ズンと頭痛がして、目の前の光景がぐにゃりと曲がった。



「っ……」



わっ…なにこれ…っ





「あの…前、進んでますよ」



「あ、すみません…」



後ろの人に諭されて、私は、深呼吸をすると、バスに乗った。



今のは何だったんだろう…。



要さんに言われてからなるべく睡眠時間を伸ばしたけど、まだ体調が万全じゃないみたいだ…。



バスの中に入ると、朝のラッシュからか、人がぎゅうぎゅうと押し込まれていた。


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