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近くて甘い
第12章 お願いの仕方 〜真希の場合〜
それじゃあ初夏になろうというのにタートルネックしか着れない…

困っているのに光瑠さんは動きを止めるどころか、唇をどんどん滑らせていった。



「───お前も教科書に名前を書いてるだろう…それと同じことだ」



………ぜんっぜん違うよっ!


「やめてくださいってばっ…!」


諦めずに抵抗すると、光瑠さんは顔を上げて、グッと私に迫って、私の額に指を立てた。


「なら、ここに『有川光瑠』とマジックで書くぞ」


「えぇっ…」


真顔な光瑠さんに呆れてものも言えない。


「どっちがいい、選ばせてやる」


……どっちかしかないみたいで…


しかもそれは二択のようにみせて一択だ。


その日、長袖のワイシャツを首まで閉めて登校した私を見た梨子に


「またその優等生スタイル?」


と言われたのは、
語るまでもない話だ。


光瑠さんは優しい。

けど、嫉妬深くて心が狭いのがすごく困った短所だ…
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