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近くて甘い
第20章 王子の申し出

「田部さん…?」


「あのっ…あなたは…」


もしかして…


「あっ、すみません、私、藤木真希と申します…」


「藤木…真希…」


「あっ…はい…あの…えっと…」



顔をほんのり赤らめた真希は、チラと光瑠の方を見た後、俯いた。



「光瑠さんのっ…婚約者…です…」



消えそうなほど小さな声でそう言った真希は、照れくさそうに笑った。


やっぱり…っ


香純のいっていたのと、実際の彼女のあまりの違いに驚いた加奈子はひれ伏さんばかりの勢いでしゃがみこんで、書類をかき集めた。



「すみませんっ…私のミスですからそんな未来の社長夫人にこんな事っ…」


「田部さん、手伝うよ──」


“未来の社長夫人”
その言葉に小さく腹を立てた要は加奈子の言葉を遮るようにして、微笑んだ。



「わっ、私もっ…ただの高校生ですからっ…」


「あっ、じゃあ僕もっ…」



慌てて酒田もその作業に加わる。
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