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近くて甘い
第22章 疑惑の二人
「申し訳ありませんっ…」



すぐに頭を下げたその人の額に油汗が光る。


うぅん…と唸った要さんは、顎に手を置いて、振り返り、田部さんの背中に手を添えた。



「…謝るなら彼女に」



真っ赤な田部さんは、狼狽えたまま、目を見開いて、大丈夫デスっ!!と叫んだ。



「大丈夫じゃないな…君はよく頑張っているのに…僕が気分が悪いからね…」



ニコリと笑った要さんに、私はドキリとした。



もし、怒鳴られたのが、田部さんじゃなくても、要さんは同じことをしたかもしれない…


それでも、やっぱり、田部さんを見る眼差しや表情はとても穏やかで、


要さんの中で田部さんは、やはり他の人とは違うのじゃないかと



そんな事を思わずにはいられなかった。



「副社長…っ…」




もちろん、田部さんの顔は、さらに紅くなって、もう今にも倒れてしまいそうだ。



「田部っ…申し訳なかった…」



少し不服そうにそう呟いた彼は、はぁ、と息を吐いて項垂れた。



「以後、気をつけるように…


社員にとって、働きやすい、いい会社に、したいからね…」



それだけ言った要さんは、落ち込む彼のことも気遣うと、そのまま振り返って立ち去っていった。

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