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近くて甘い
第35章 交わらない想いと出発
「真希っ…」





この低い声が好き…


いや、


光瑠さんが好きで好きで仕方が無いっ…





「誤解だと言ってるだろうがっ…!俺はあの時───」



「もう何も言わないで下さいっ!」





言い訳なんかいらない…


もうあの時の事は思い出したくない──




触れた扉。





この一枚の板の向こうに、大好きな人がいる…





私は、光瑠さんの人形にはなれない…っ。




“愛してる”と言われる度に、他の人にも言っているかもと…



キスする度に、他の人にも同じようにキスをしているかもと…




そんな事を考えながら生活をすることは、私には出来ないっ…






「もう放っておいて下さいっ…」





あぁっ…



口ではそう言いながら、もうたまらなく彼が恋しい───…




「もう顔も見たくありませんっ…」




今すぐ会いたい…っ



「っ………」




「パリに行って…っ、そのまま帰って来なければいいのにっ……!」




お願い…

どこにも行かないでっ…





「っ………そうしたら、お前は満足かっ…」




「……っ」



「……………真希っ…」





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