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近くて甘い
第48章 想いは混ざる


「あなたと、話すことはありません…」



「っ………あなたが…幸せならいいの…っでもっ…」




ツカツカと迫ってくる恵美を、加奈子はじっと見つめた。



本当に、細くて…白くて…



この人は、なんて儚いんだろう…




要と親密そうなことが気になりながら、加奈子は黙ってぎゅっ強く拳を握った。





「……大切な人がいるの…?もしかして、もう結婚してるの?だったら私は…」




恵美の言葉を聞きながら、脳裏で幸せそうに微笑む真希が浮かんだ。


だが────…




微笑んでいる相手は、自分ではない…





「────────…」




「黙ってるってことはいないのよね…?ねぇ…要くん私──」



「いますよ」




恵美の言葉を遮って、そうキッパリと言った要に、恵美は身体を強張らせた。




そして、威勢のいい要に加奈子は、ホッと息をついていた。



そうよっ!
副社長には真希ちゃんというずっっと思い続けている素敵な子がいるんだから!



何故か得意気な顔をして恵美のことを見つめていると、グッと腰を掴まれた感覚に、加奈子はひょえっ⁉︎っと間抜けた悲鳴を上げた。





「彼女です───…」



「え?」




困惑した加奈子が振り返るのと同時に、要は強く加奈子の事を抱き締めた。



え、



え、


ええええぇぇぇえええ!?



今、何が起きてるの!?





クルクルと目を回す加奈子にはお構いなしに、要は恵美のことを見つめた。




「彼女に変な誤解をされたくないので…」



「ちょっ…要くん…?本当にその子が───」




「帰ってください……先生…」





口をワナワナとさせた恵美は、そのまま何も言わずに振り返るのと、スタスタと早歩きでそこから立ち去って行った。

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