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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第10章 菜々姫~囚われた戦国の美妻
「山中でそう申したというではないか」
老人は、菜々の耳に触れるほどに口を近づけ、ねっとりとささやいた。
「いかにも・・・・」
下を向いたまま、菜々は気丈に言った。
「わらわはここにいる男の妻じゃ。勝重などという男は知らぬ」
目の前に立つ家臣たちが、顔をこわばらせた。
だが、直後に彼らは菜々の魂胆を察したかのように、冷静な表情を装った。
「このおなごの言葉に嘘はないな」
老人が、一転して甚八を見た。
「嘘ではござらん」
「お主の女房というか」
「その通りじゃ。実はな、我ら夫婦は藤川の国に嫌気がさしてのお」
「ほう」
「二人して戦乱に乗じて国抜けをしようとしておったところよ」
「そこを我らが拘束したというか」
「さよう」
試すように、老人は甚八をにらんだ。
甚八もまた、挑むように老人を見つめ返す。
「伴天連信者にはおきてがあるらしい」
立ち上がった老人が、広間全体に聞こえるほどの声で言った。
「己の夫、妻だけを愛し、他の者と交わるのはもってのほかじゃと」
菜々の表情がこわばった。
「ならばそなたたち、ここで証拠を披露せい」
甚八が沈黙したまま顔をこわばらせる。
「妻をここで抱くのじゃ」
「・・・・・」
「難しいことではあるまい。毎夜、仲睦まじくしておるのであろう」
「・・・・・」
「我らにその睦まじさを見せつけるのじゃ。さすればそなたたちが夫婦であること、信じてやろう」
甚八は言葉を返すことができない。
二人の前に立つ家臣たちの拳が震えている。
「どうじゃ。できぬと言うか」
重苦しく、長い沈黙。
それを破ったのは菜々だった。
「おおせに従えばここから解放してくれますな」
老人は細い視線を菜々に向けた。
「嘘はいわぬ。そなたが勝重の妻であれば、この男に抱かれることはなかろう。伴天連の教えに背くだけでなく、夫を裏切ることになるでのう」
「承知しました」
言葉を発した菜々を、甚八が硬い表情で見つめた。
甚八の瞳が、何かを菜々に訴えている。
だが、菜々はそれを読み取ろうとはしなかった。
野性児のような甚八の瞳に純な光が宿っていることに、菜々は初めて気づいた。
老人は、菜々の耳に触れるほどに口を近づけ、ねっとりとささやいた。
「いかにも・・・・」
下を向いたまま、菜々は気丈に言った。
「わらわはここにいる男の妻じゃ。勝重などという男は知らぬ」
目の前に立つ家臣たちが、顔をこわばらせた。
だが、直後に彼らは菜々の魂胆を察したかのように、冷静な表情を装った。
「このおなごの言葉に嘘はないな」
老人が、一転して甚八を見た。
「嘘ではござらん」
「お主の女房というか」
「その通りじゃ。実はな、我ら夫婦は藤川の国に嫌気がさしてのお」
「ほう」
「二人して戦乱に乗じて国抜けをしようとしておったところよ」
「そこを我らが拘束したというか」
「さよう」
試すように、老人は甚八をにらんだ。
甚八もまた、挑むように老人を見つめ返す。
「伴天連信者にはおきてがあるらしい」
立ち上がった老人が、広間全体に聞こえるほどの声で言った。
「己の夫、妻だけを愛し、他の者と交わるのはもってのほかじゃと」
菜々の表情がこわばった。
「ならばそなたたち、ここで証拠を披露せい」
甚八が沈黙したまま顔をこわばらせる。
「妻をここで抱くのじゃ」
「・・・・・」
「難しいことではあるまい。毎夜、仲睦まじくしておるのであろう」
「・・・・・」
「我らにその睦まじさを見せつけるのじゃ。さすればそなたたちが夫婦であること、信じてやろう」
甚八は言葉を返すことができない。
二人の前に立つ家臣たちの拳が震えている。
「どうじゃ。できぬと言うか」
重苦しく、長い沈黙。
それを破ったのは菜々だった。
「おおせに従えばここから解放してくれますな」
老人は細い視線を菜々に向けた。
「嘘はいわぬ。そなたが勝重の妻であれば、この男に抱かれることはなかろう。伴天連の教えに背くだけでなく、夫を裏切ることになるでのう」
「承知しました」
言葉を発した菜々を、甚八が硬い表情で見つめた。
甚八の瞳が、何かを菜々に訴えている。
だが、菜々はそれを読み取ろうとはしなかった。
野性児のような甚八の瞳に純な光が宿っていることに、菜々は初めて気づいた。