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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第17章 千鶴~相撲部屋の美しき女将
「もっと前に出んか!」
早朝の空気を切り裂く親方の鋭い声。
「浦松、そんなことじゃ十両など務まらんぞ!」
土俵上、鉄平が頭をつけ、猛然と前に出た。
「うおっ!」
彼を食い止めるのは柿本だ。
懸命に土俵際でこらえ、鉄平の攻めに耐える。
凄い・・・・
初めて稽古見学に来た若葉は、圧倒されて言葉も出ない。
この春から上京し、大学に通い始めた若葉。
こちらで再会を果たした鉄平に、若葉は稽古を見に来るよう誘われたのだ。
「みんな真剣でしょう?」
若葉の隣に座った部屋の女将、千鶴が声をかけた。
和服を凛とした雰囲気で着こなす女将は、若葉が想像していた以上に美しい女性だった。
「真剣にやる子だけが勝ち残れる世界です」
若葉は女将を見つめた。
「自分を信じて、最後まで真剣にやる子が強くなるのよ」
「・・・・」
「彼はいつも真剣です。3年前からずっと」
女将の視線が、鉄平にまぶしそうに注がれている。
それは、これまでの日々を想起しているように見えた。
両差しで頭をつけた鉄平に、柿本が強引な小手投げに打って出る。
片足でこらえながら、鉄平もまた下手投げで対抗した。
「おおっ」
唸り声をあげ、二人が土俵外に重なり合うように倒れ込んでいく。
「きゃっ」
若葉は思わず顔を手で覆った。
息を荒げ、土まみれになったまま立ち上がることができない両力士。
息を呑んでいる若葉に、女将がささやいた。
「浦松のこと、頼みますよ」
「えっ?」
「浦松が教えてくれました。故郷で待っていてくれた彼女が今日は稽古を見にきますって」
「彼、そんな風に?」
うなずく千鶴の瞳の奥に熱く光るものがあることに、若葉は気づかない。
何かを吹っ切るように、千鶴が叫んだ。
「浦松、彼女が見てますよ!」
桟敷席から飛んだ女将の声に、稽古場の雰囲気が一瞬和らいだ。
立ち上がった鉄平に、まだふらついている柿本が片手をかかげて示す。
鉄平は柿本の手を力強くたたき、ハイタッチを交わした。
「浦松さん、俺もすぐ追いつきますよ」
「十両で待ってますよ、柿本さん」
「畜生、言いやがる」
柿本の顔に笑みが浮かんだ。
いよいよだ。
関取として臨む初めての場所が迫っている。
浦松鉄平の青春は、まだ始まったばかりだ。
<第17章 完結>
早朝の空気を切り裂く親方の鋭い声。
「浦松、そんなことじゃ十両など務まらんぞ!」
土俵上、鉄平が頭をつけ、猛然と前に出た。
「うおっ!」
彼を食い止めるのは柿本だ。
懸命に土俵際でこらえ、鉄平の攻めに耐える。
凄い・・・・
初めて稽古見学に来た若葉は、圧倒されて言葉も出ない。
この春から上京し、大学に通い始めた若葉。
こちらで再会を果たした鉄平に、若葉は稽古を見に来るよう誘われたのだ。
「みんな真剣でしょう?」
若葉の隣に座った部屋の女将、千鶴が声をかけた。
和服を凛とした雰囲気で着こなす女将は、若葉が想像していた以上に美しい女性だった。
「真剣にやる子だけが勝ち残れる世界です」
若葉は女将を見つめた。
「自分を信じて、最後まで真剣にやる子が強くなるのよ」
「・・・・」
「彼はいつも真剣です。3年前からずっと」
女将の視線が、鉄平にまぶしそうに注がれている。
それは、これまでの日々を想起しているように見えた。
両差しで頭をつけた鉄平に、柿本が強引な小手投げに打って出る。
片足でこらえながら、鉄平もまた下手投げで対抗した。
「おおっ」
唸り声をあげ、二人が土俵外に重なり合うように倒れ込んでいく。
「きゃっ」
若葉は思わず顔を手で覆った。
息を荒げ、土まみれになったまま立ち上がることができない両力士。
息を呑んでいる若葉に、女将がささやいた。
「浦松のこと、頼みますよ」
「えっ?」
「浦松が教えてくれました。故郷で待っていてくれた彼女が今日は稽古を見にきますって」
「彼、そんな風に?」
うなずく千鶴の瞳の奥に熱く光るものがあることに、若葉は気づかない。
何かを吹っ切るように、千鶴が叫んだ。
「浦松、彼女が見てますよ!」
桟敷席から飛んだ女将の声に、稽古場の雰囲気が一瞬和らいだ。
立ち上がった鉄平に、まだふらついている柿本が片手をかかげて示す。
鉄平は柿本の手を力強くたたき、ハイタッチを交わした。
「浦松さん、俺もすぐ追いつきますよ」
「十両で待ってますよ、柿本さん」
「畜生、言いやがる」
柿本の顔に笑みが浮かんだ。
いよいよだ。
関取として臨む初めての場所が迫っている。
浦松鉄平の青春は、まだ始まったばかりだ。
<第17章 完結>